買占めの心理とは?緊急時の購買行動の特徴と対策│3.11東日本大震災

3.11の震災後、薄暗い店内のスーパーで私は愕然としました。

普段高々と積み上げられている商品が、何もなくなっています。1人何個までと書かれた紙が、無惨に散っていました。

液晶の向こう側のように思っていた震災を、初めて自分の身で感じ、このテーマを選択しました。

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東日本大震災をテーマに選ぶ

私の論文は東日本大震災後の行動を分析対象とします。

東日本大震災とは、東北 地方太平洋沖地震及び原子力発電所事故による災害です。

2011年3月11日に三陸沖を震源と するマグニチュード9.0の巨大地震が発生。

この地震によって被害を受けた東京電力福島第一 原子力発電所では、重大な原子力事故に発展しました(福島第一原子力発電所事故)。

震災時、首都圏では買占め問題が発生

震災に関連し、主として首都圏において、スーパー、コンビニ、商店などの店舗において品薄状態になるという買占め問題が発生しました。

それにより、3月17日に蓮舫消費者担当大臣が買占めを控えるよう呼びかけました。

災害への不安から過剰に反応し、買い急ぎ、買いだめを行う消費者が増加しました。

このため品薄となった店舗を見て、品切れに対する不安から更に過剰な購買を行うという悪循環になりました。

あるスーパーでは、通常時の2倍程度の品物を供給しているものの、消費者が商品によっては普段の10倍から30倍ほどもの量を買おうとしているため、その需要に追いつかず、品薄、品切れ状態になっていました。

買占めは緊急時に見られる購買行動

生活物資に品不足・高騰が予測される生活物資に対する買占め行動は、緊急時における購買行動です。

緊急時の購買行動の事例として、1970年代に起きたエネルギー危機によるトイレットペ ーパーの買占め騒動があります。

トイレットペーパーの買占め騒動の調査結果によると、緊急時の購買行動に、通常の購買行動とは異なる特徴として、

  1. 意思決定の緊急性
  2. 情報の重要性
  3. 他の購買者からの影響

の3つが挙げられます。

通常の購買行動では重要視されている情報探索や行動選択の評価に時間をかけることは、緊急時において適応的ではありません。

今買わなければ無くなるかもしれないという状況に、①意思決定の 緊急性が発生します。

意思決定の緊急性はあせりや不安をもたらし、一連の情報処理を迅速化させます。

したがって、不充分な情報に基づいて、リスクを伴ったヒューリスティックな意志決定をせざるを得なくなります。その結果、②情報の重要性が高まります。

そして、非常に多くの消費者が希少性の高い物資を買占めすることに関われば、消費者は相互に、あるいは一方的に影響を及ぼすようになります。

つまり、緊急事態での買占め行動は個人的行動であると共に集団的現象でもあるのです。

買占め行動は先行するグループから品不足および買いだめについての情報を受け取ることによって影響を受けます。

また、自分以外の消費者は競争相手となり、相互の利害は対立しあうと見なされます。そこで、③他の購買者からの影響が発生します。

【心理学的考察】基礎比率の無視と記憶の認知バイアス

上記に、緊急時の購買行動の特徴として、①意思決定の緊急性②情報の重要性③他の購買者からの影響の3つを挙げました。

この特徴より、買占め行動の心理を考察します。

震災後、品不足・高騰を予想する買占めの情報よりも、買占めの必要性がないと伝える情報の方が圧倒的に多かったにも関わらず、買占め行動を起こした心理として、基礎比率の無視と記憶の認知バイアスを挙げます。

基礎比率の無視は、具体的な現象やトピックの背景にある分布などには注意せずに、具体的なトピック、そのものだけに注目してしまう心理現象です。

認知バイアスとは、ある対象を評価する際に、自分の利害や希望に沿った方向に考えが歪められたり、対象の目立ちやすい特徴に引きずられて、ほかの特徴についての評価が歪められる心理現象を指します。

このことから、まず基礎比率の無視により、買い占め行動に向かわせる情報だけに注目し、次に認知バイアスによって、その情報から受ける考えを歪めた結果、買占め行動が起きたと推測できます。

加えて、実際に店舗で他者に影響を受けます。

自分以外に大勢の人がいると、取りあえず周りに合わせようとする多数派同調バイアスが働きます。

つまり、緊急性のある状況下で意思決定の判断が鈍っている中、情報を歪めて捉え、さらに他者から影響を受けることで買占め行動を加速させたと考えられます。

買占め対策としての値上げは法で規制すべき?

買占めの対策として、商品の値上げがあります。

生産地が被災すれば生産が滞ります。その中には、震災を受けて需要があがる商品も含まれます。

その際、需要が供給を上回り値段が高騰することは自然なことです。

しかし、企業のイメージダウンに繋がるため、震災時に値上げを行うことは困難です。だからといって、法で規制するのは大げさではないでしょうか。

人のモラルで解決できる問題を、緊急時だからといって法の力で取り締まることは適切ではありません。

そこで、私は商品を買うほど高くなるシステムを提案します。

何個かまとめて購入することで安価になるシステムの逆、まとめ買いすればするほど高価になる値段設定です。

そして、その上乗せ分を被災地に募金すると明記します。

これにより、企業がイメージダウンすることもなく、買占めを抑制することが可能となります。

災害の影響は非被災地にも及ぶ

震災の影響は、被災地だけではなく非被災地にまで及んでいます。

災害時には考えて行動することがとても重要です。

個人で考え、地域で考え、日本全体で考える。

震災復興には、非被災地の人たちも含めた日本全体の力が必要不可欠でしょう。

論文の執筆を通して、3.11を深く知ることができました。以前は震災時に買占めのような行動をする人の気持ちが分からなかったのですが、分析したことで、ニュースに出ている人たちの気持ちが分かるようになりました。

(文・心理学部)