卒論で教材開発…小学1年生は自分で算数問題を作れるか?

「小学1年生が自分で算数の問題を作る」。

これを卒論のテーマにしたのは、算数における式の意味を具体的な場面と結びつけて理解できるようになってほしいと思ったからです。

大学では、初等教育の算数撰修という学部に在籍していました。そこでは、小学校の教員免許を取るための基礎的な学習を行ったり、主要な専門教科として算数の指導法、その背景となる数学の専門知識を学んでいました。

算数数学は、他の教科と比較して系統性が強く積み重ねがとても大切であることから、小学校1年生の内容を特に重視して研究することによって、今後の学習につながっていくのではないかと考えていました。

さらに、「問題づくり」という発展的な内容を取り扱うことで、より深く学習できるのではないかということもあり、このテーマで論文を作成しました。

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小学校1年生の算数をテーマにした卒論の構成

論文は大きく4つに分けてあります。

第1章は、オランダの数学教育に関する論文の考察が書かれています。第2章は学習指導要領の抜粋、第3章は教科書比較と教材開発について、そして第4章に学習指導案といった構成になっています。

第1章と第2章については引用が多かったのですが、算数を指導する上で大切なポイントをまとめていました。オランダの算数では、日本と比較してより高度な問題も取り扱っていることや、答えが一つでない問題(オープンエンドな問題)に取り組んで思考力を磨いているそうです。

指導要領には教科の目標や、どんなことを学ばせたいかが的確に書かれているので、隅々まで読んで大事なところを書き出していました。

日本の算数教科書の特長

第3章は教科書会社5社を比較し、「加法(たし算)、減法(引き算)の式」という単元の内容がどのように扱われているのかを整理しました。

5社に共通しているのは、すでに問題と式が与えられているため、授業ではその式をそのまま使うことが多いということです。

また、その問題が「加法、減法の式」におけるどのような問題なのかも整理しました。

加法については、量が増える問題(増加)や、2つの量を合わせる問題(合併)といったものがありました。また、減法については、量が減る問題(求残)や2つの量の差を求める問題(求差)などといったものがありました。

しかし、加法、減法の問題というのは他にもあり、一つの式を学習するだけで終わってしまうのでは、理解が深まらないのではないかと考えました。

児童が自ら算数の問題を作成する教材開発

そこで、「絵を使って、児童が自ら算数の問題を作成する」という授業を行なって、式の意味理解をより深めようと教材開発を行いました。

使用するのは、滑り台、ジャングルジム、シーソーが描かれた公園の絵、男の子と女の子の絵が描かれたマグネットです。

これらを使い、児童は算数の問題を考えていきます。例えば、「シーソーに男の子が3人、滑り台に男の子が2人います。全部で何人でしょう」といった、たし算の問題です。

問題は、「こうえんに 8人います。5人かえりました。そのあとに 2人きました。いま こうえんには なん人いますか?(3口の計算、減少→増加)」といった、3つの数が出てくる式もあるなど、幅広く予想できます。

この単元は、1年生の3学期ごろに設定されているため、既習事項の確認にもなります。

教材を使った算数授業のイメージ

第4章では、指導案として授業の流れが書かれています。子どもが自分の考えた問題を友達に紹介し、みんなで式を立てて答えを導くといった流れで行います。

この時、問題を話しながら、絵とマグネットを動かしていくことで、数がどのように変化していくのかを確認することができます。ここが、この授業で大切にするポイントだと考えました。

たくさんの問題を取り扱い、加法減法の式についてより理解を深めていくのが狙いです。

指導教官の評価と事業実践への期待

卒業論文に取り組む前、私は数カ月入院することになり、スタートに出遅れました。

そんな時でも、指導教官は、「しっかり身体を治してからでもいいから。」といってくださり、他のゼミ生より時間がかかりましたが、丁寧に教えてくださいました。

2月に卒業論文を提出した際には、「一生懸命考えて、いい論文になったと思うよ。ぜひ、授業で実践してね。」という言葉をかけていただき、私はとても嬉しくなりました。

教師として、自分で開発した教材を試してみると…

さらに、大学を卒業した後、数年だけ教員として働くことになりました。

その時に、ちょうど卒業論文で扱った単元を行うことになり、やってみようと思い取り組みました。

結果は、失敗でした。

子どもたちがどんな問題を考えたら良いのかわからず、2人ほどの子どもが教科書に出てきたのとほとんど変わらない問題を作って終わりました。

指導教官に、実践したことを報告しました。もちろん、うまくいかなかったことも伝えると、「現場はそんなもんだ。でも、やってみて新たなことがわかったと思うし、問題づくりをやることは有意義だと思う。さらに洗練していってほしい。」という言葉をいただき、励みになりました。

現在は別の仕事を行なっていますが、この時の経験が生きているなと感じています。算数という学習は奥が深く、小学校に戻って一から学び直してみたいとも思いました。

卒業論文という一つのことに必死に取り組んでいた時期があったからこそ、今も物事を真剣に考え、より良いものにしていこうと思うことができています。指導教官とは今も年賀状等で連絡を取り合っています。