「パンク」を卒業論文のテーマを選んだ理由は二つあります。
一つ目は、私自身がとても「音楽」が好きだった為です。卒業論文と言えば、大学生活の集大成であり、人生を通してもここまで熱中して学習する機会もないと考えていました。幸いにも私が所属していたゼミは「人類学」を扱うものだった為、人類が関与しているテーマであればなんでもokという感じでした。
「だったら、大好きな音楽にしよう」と思い、音楽の中でも特に好きな「パンク」というジャンルについての研究を決心しました。
二つ目の理由は、パンクというジャンルそのものに関する文献が比較的多くあったことです。パンクとは、主に1970年代にイギリスを中心として広まった若者文化なのですが、その特異性から学術的な文献も多く、研究が容易に感じられました。
パンクの成り立ち
私が研究していたのは、「パンク」という文化形態でした。簡単に言うと、パンクという形態が、「パンク」と呼ばれるようになった背景から、パンクそのものが社会に及ぼした影響まで幅広く考察しました。
まず調べたのは、パンクの成り立ちです。パンクとは、現在では音楽やファッションのジャンルとして認知されているかと思います。ただ、それがそのように認知されるまでには、必ず何かしらの理由や背景があります。
「そもそものルーツは何なのか。また、それが本当に正しいことなのか。」そんなことを考えながら、作業を進めました。そのルーツについてザックリ説明すると次のようになります。
1.1960年代、アメリカを中心にロックンロールという音楽が流行する。このロックンロールとは、当時の貧富の差や若者の持つ不安等を歌と音で体現したもので、「反社会勢力」として世間からも注目されていた。
2.ロックンロールが大衆音楽として庶民に親しまれるほど流行し、ロックンロールの商業化が起きる。これによって、ロックンロールに対する様々な考え方が生まれ、派閥化する。
3.1970年代初頭、その中から、若者の持つ悩みや不安、底屈といった感情をエネルギーに変えたパンクという文化が誕生する。特に、イギリスの白人の若者を中心に爆発的に流行した。
と、こんな感じです。厳密に言うと若干違うのですが、このような形にまとめました。
パンクが与えた社会への影響
成り立ちが終わったので次は、パンクは実際にどのような文化で、それがどのように社会へ影響を及ぼしたのかといった点を抑えました。
パンク研究の一番の醍醐味といえば、その見た目です。モヒカンスタイルに革ジャン、よく見ると、革ジャンに安全ピンがついていたり、顔には大量にピアスが開いていたり、その攻撃的な見た目はかなり印象的です。
パンクに属す人々は、皆こぞってこの様な格好で街をふらつきます。では、誰がそうさせたのでしょうか。答えは、パンクアーティスト達です。
ここではパンクアーティストと言っていますが、私の論文ではほとんどパンクバンドに傾倒していました。
パンクバンドが示した文化形態
パンクバンド達は、1970年代当時、職を失ったり、やることが無かったり、貧富の差が拡大したりとイギリスを襲っていた大不況による弊害を音楽で表現しました。
その歌の矛先はイギリス王室にも向けられました。自分たちの思いを代弁してくれる存在がいることに熱を持った当時の若者たちは、パンクバンドの格好を真似て、街をふらつきます。
不良と一言で表現することもできますが、彼らは、独自のマインドや世界観をもって生活する「文化形態」にまで発展しました。
「仕事はあるけどつまらない、自由ではあるけれど、なんでもできる環境じゃない」といった虚無感を音楽というエネルギーに変え、社会に訴えかけたパンクバンドの存在は彼らにとっては英雄的な存在にまで発展しました。
パンクアーティスト達の功績
パンクアーティスト達の残した功績は決して小さなものではなく、社会を突き動かすものになりました。
例えば、パンクという文化は、性別的な境界がほとんどないものとされていたので、当時社会的弱者であった女性が、パンクに属することで社会に対して声を上げることが可能になりました。
それ以外にも、イギリスにやってくる移民との交流など、社会的・文化的な様々な面で、パンクという文化は、社会に影響を及ぼしてきたことが判明したのです。
これまでは、ただ「かっこいいなあ」とか「奇抜でおしゃれだなあ」といった感情だけで見ていたパンクというスタイルも、この研究を通して非常に様々な角度から見られるようになりました。
それだけでなく、パンク以外の多様な文化形態に対しても、先入観やイメージだけではとても想像がつかないような背景があるかもしれないという、意識を持つことができるようになりました。
また、何事に対しても、見た目や伝聞だけで判断してはいけないと、私自身の教訓になった良い経験でした。
卒論と就活が重なることを見越して準備を
今回の卒論に関しては、私なりにも非常に満足のいく結果となりました。
やっぱり、自分の好きなことについて研究するということは、やっていても楽しいですし、納得のいくまで調べることができてストレスが少なかったです。
教授にも、「今年のゼミの中で、一番良い出来だったよ」と評価をいただいたのも、それだけ自分が熱中できたからだと思います。
後になって分かったことですが、やっぱり単位は早めに取得しておくことが大切だと思います。ほとんどの人は、卒論の時期と就活の時期が被ってしまい、手に負えない状態になってしまいがちです。そこに、普段の授業まで入ってくるとかなり焦りますよね。
なので、確実な対策として「単位はできるだけ早く取得しておく」ことをお勧めします。私の場合は、4年生の時点でゼミしか授業が無かったため、就活も卒論もかなり本腰を入れて臨むことができました。卒論も、やりたいときにやりたい量を進めるだけで完成できました。
人生の中でも数少ない、ガッツリ研究する大切な機会に、余すことなく熱中する時間があれば、人生を変える大一番の就活でも最大限の力を発揮できるかと思います。あくまでも効率面での話ですが、これは本当に大切だと実感しました。
(文・taka)