私が卒業論文で選んだテーマは、1994年のルワンダで起きたジェノサイドのきっかけになったフツ族とツチ族の民族対立についてでした。
正直、最初はルワンダの場所すら知らなかったですし、ジェノサイドなんて本当にあったの?という状態でした。
しかし、よく調べていくとこのジェノサイドはナチスに並ぶ凄惨な出来事だったそうです。
そんな大きな出来事があったということを知っておかなければという気持ちからこのテーマを選びました。
ルワンダのフツ族とツチ族
ルワンダという国の名前は聞いたことはあるけど、どこにあるかはよくわからないという人もいらっしゃることでしょう。
ルワンダは中央アフリカの小国です。目を凝らして見なければ、よくわからないような国です。そして、この国には、大きく分けて2つの民族がいます。それがフツ族とツチ族です。
1994年のジェノサイド(大虐殺)
そして、1994年のルワンダのジェノサイドは、フツ族がツチ族を大量虐殺するというジェノサイドでした。その被害者の数は50万人から100万人ともいわれています。
100万人と言えば、日本の政令指定都市に匹敵する人数です。それだけの人の命が約1か月で失われたといいます。とても恐ろしい出来事ですね。
ルワンダにおける植民地支配と民族対立の誕生
ルワンダのジェノサイドを詳しく調べていくと、ツチ族とフツ族の民族対立であるという説明がなされています。
しかし、ルワンダでは歴史的にツチ族とフツ族の対立は鮮明ではありませんでした。さらにもともとは、フツ族とツチ族という区分すら曖昧で、誰も意識していないようなものだったというのです。
それが変わったのが、1919年以降のベルギーによる植民地支配でした。
効率の良い植民地支配の手段は?
当時のヨーロッパでは、白人が他の民族よりも優秀であるという人種観がありました。白人による人種差別はよく聞く話だと思います。そしてアフリカにおいては、白人に近いとされているエチオピアがアフリカにおける文明を築き上げたのだ、という説がとられていました。
ルワンダを植民地として得たベルギーは、効率の良い植民地支配をするために、一部の人間に他の人間を支配させようと考えました。そこでツチ族に目を付けました。
ツチ族の起源は北方からやってきた民族だと言われていたので、かつてツチ族がエチオピアからルワンダにやってきたのだ、と考え、ツチ族に支配させようということになったのです。
ベルギーによる大雑把すぎる民族定義
しかし、当時のルワンダの人たちは、ツチ族とフツ族の区別が曖昧であり、自分たちも何族なのかよくわからなかったそうです。ツチ族とフツ族は言語も、文化も宗教も同一なので、ほとんど差異はなかったのです。
困ったベルギーは、「ツチ族ってルワンダの北からやってきた牧畜民らしいから牛を10頭以上もってる人がツチ族ね!」ということにして強引にツチ族とフツ族を区別していきました。
びっくりですよね。当然牛を10頭ももてる裕福なフツ族もいれば、牛を10頭ももてない貧しいツチ族もいたでしょう。それを強引に区分けし、さらには住民票にフツ族かツチ族かということまで表記させました。
そのうえで、白人に近い優秀なツチ族には、フランス語などたくさんの教育を施し、エリート層へと育成し、フツ族には特になにもしませんでした。
ツチ族とフツ族の逆転劇!
このあたりからツチ族とフツ族の間で軋轢が生じていきます。十分な教育を施され、ベルギーの後ろ盾もあるツチ族は必然的に国の重要な職業につき、実権を握っていきます。
一方フツ族は、ほとんどが農民でした。こうして民族間に格差が生じていきましたが、第2次世界大戦以降、ルワンダのキリスト教の教父が、「フツ族だけ不当に扱われているのはおかしい!」と思い、フツ族にも教父自ら教育を施すようになりました。
こうしてフツ族にも、エリートと呼ばれる人たちが現れていきます。そして1960年代のアフリカの多くの国々が独立をしていく流れにのってルワンダでも総選挙をして、独立を果たしました。
さらにツチ族による専制支配を認めるかという選挙も行い、圧倒的多数で専制支配から民主制へと移行が認められました。これはルワンダの人口構成がツチ族2割に対してフツ族が8割だったため、選挙をすれば、フツ族が圧倒的に強かったということがあげられますね。
ハビャリマナ大統領の飛行機墜落と大虐殺の始まり
こうして、ルワンダはフツ族中心の民主国になりましたが、すぐに独裁国になってしまいます。さらに、選挙で負けたツチ族は民族浄化として、国を追われてしまいました。
追い出されたツチ族は、隣国ブルンジに逃げ込み、ルワンダ愛国戦線を結成して、ルワンダでの政権奪還を画策するようになります。このあたりでルワンダにおける民族対立が決定的になったように感じますね。
そして1990年代にルワンダ愛国戦線はルワンダに向かって武力侵攻をしかけるなど、国のなかで緊張が高まりました。そして、フツ族の過激派は「かつて我々が追い出したツチ族が復讐をしにくる。やらなければやられてしまう!」と、国民を煽りまくりました。
そんな状態のときに、ルワンダの大統領、フツ族のハビャリマナ大統領を乗せた飛行機が墜落してしまいます。原因は不明でしたが、臨戦態勢のなか、多くのフツ族たちはツチ族による仕業だと判断し、恐ろしい大虐殺が始まったということでした。
すごい話ですよね。こんな恐ろしいことがあったということは、やはり知っておくべきだったと感じました。
卒論を提出した後から、世界にはいろんな出来事があるのに自分は何も知らない!ということを痛感し、気になったことはすぐ調べるようになりました。卒業論文をやってよかったなと思います。
(文・人文社会科学部法学科ひろ)