フィールドワークが必要な文化人類学の卒論で「民泊」をテーマに

近年、「民泊」はたくさんの人が注目する話題のテーマです。

しかし新聞やニュースで取り上げられているのは、違法民泊や民泊新法についてばかりです。

私のテーマの魅力は、そのような従来の視点からではなく、民泊を経営するホストに注目していることです。「どのような人がホストをしているのだろう?」とか、「なぜ民泊経営を続けているのだろう?」、また「民泊をすることってどのように楽しいんだろう?」などといったより身近な疑問を明らかにするのです。

フィールドワーク調査が必要な文化人類学の卒論

私が学んでいる文化人類学では、フィールドワーク調査が必須でした。

私は、昔から興味のある海外について、日本で調べられるテーマとして民泊を選びました。調査中は、外国人のゲストとコミュニケーションをとりながら、楽しんで行いました。

卒論は1年間かけて取り組むものなので、興味があって、楽しめるテーマが一番いいです!

「民泊」をテーマにフィールドワーク

私の論文では、ホストが民泊経営から得ている豊かさとは何なのかをフィールドワーク調査を通して明らかにしていきました。

ここでは、民泊とは何なのかを説明した後、フィールドワーク調査で得られた事例を紹介し、最後に結論を言います。

Airbnb(エアビーアンドビー)と民泊

民泊が注目されるきっかけとなったのは、Airbnb(エアビーアンドビー)という民泊のホストとゲストをつなぐマッチングサービスの普及です。

Airbnbは2008年に米サンフランシスコで始まり、日本には2013年に進出、その事業を「民泊」と訳されました。(英語ではhome sharingやvacation rental、またはAirbnbを動詞として使います)。

家主居住型の民泊を選びフィールドワーク

そもそも民泊とは何なのでしょうか。石川くるみによると、「住宅(戸建住宅、共同住宅等)の一部又は全部を活用して提供される宿泊サービスのこと」です(※石川 2018)。

民泊には2つの形があり、1つは、ゲストがホストの家に滞在する形(家主居住型、またはホームステイ型)で、もう1つが、ゲストが無人の部屋に滞在する形(家主不在型、投資型)です。今回私が注目するのはもちろん、家主居住型の民泊です。

まず、私がフィールドワーク調査で訪れたのは、横浜にあるYさんのお宅です。Yさんは小学生の娘をもつ主婦で、義理の父母とともに3階建ての家に住んでいます。

1階が義理の父母の居住スペースとその経営する飲食店、2階が民泊スペース、3階がYさんの居住スペースになっています。

Yさんが民泊を始めた理由は、

  1. 海外好きだから
  2. 自由にお金が稼げるから
  3. 空いている部屋を活用できるから

の3つです。

Yさんは民泊をしようと決めてから、通勤中に情報収集をしたり、仕事の昼休憩にサイト作りをしたりしていました。

その後、1泊1500円で貸し出し(現在では1人3500円ほど)、部屋に置いてあるものはそのままで、初期投資ほぼ0円(シーツとタオルだけ新調)で始めました。Yさんはこれまでの5年間で約320人ものゲストを迎えています。

フィールドワーク調査中の16日間で、5組(13人)のゲストが訪れました。ゲストには2つのタイプがあり、1つは寝る場所として利用するゲスト、もう一つは交流を求めて訪れるゲストです。Yさんは、前者は干渉しないようにし、後者は積極的に交流するなどゲストによって対応を変えていました。

民泊ホストが考える民泊の価値とは

特に交流が多かったのがチェコ人カップルのゲストです。

彼らとは、Yさんと一緒に居酒屋に行ったり、Yさんとその夫と一緒に餃子パーティーをしたりしました。Yさんは、自分や家族の予定に合わせて、無理をしすぎず柔軟に、ゲストとの交流の時間を楽しんでいました。

民泊を始めた当初はもてなしすぎたりしましたが、続けるうちにゲストとの距離感を調節できるようになっていったといいます。

民泊の価値は何なのかについてYさんは、

  1. 家で海外旅行している気分になれること
  2. お金を稼げること
  3. 人とのつながりが出来ること

の3つを挙げました。

特に3について、Yさんは「民泊経営によって世界中に友達ができる」と話します。

ゲストと実際に家にくるまでやりとりをしたり、滞在中一緒に食事をしたり、観光地に連れていったり、お土産を交換しあったり。帰国してからもやりとりをしたり、ゲストが再度訪れたり、また、Yさんがゲストの国に訪れることもあるといいます。

私は、Yさんの他にも、

  • 民泊のために引っ越したホスト
  • 子どものために民泊を始めたホスト
  • 80歳のおばあちゃんホスト
  • 家主不在型のホスト

の4名に話を聞きました。それぞれ試行錯誤しながら、自分の生活に合う形で民泊経営を楽しんでいました。

このようにホストたちは、自分の生活に合わせて無理をせずに民泊経営をすることで、人とのつながりや、経済的な利益、時間の自由などから人生の豊かさを得ているのです。

※石井くるみ『民泊のすべて――旅館業・特区民泊・住宅宿泊事業の制度と合法化業務』株式会社大成出版社(2018年)。

調査をする上で、たくさんのゲストやホストと知り合うことができました。例えばYさんが、私が上京する際の家探しを手伝ってくれたり、仲良くなったチェコ人が定期的に連絡をくれるようになったりしました。

(文・ramen)