精神障害者のノーマライゼーションとは?日本と北欧を比較

日本の福祉制度ってどうなの?

ノーマライゼーションっていう言葉はよく聞くけど、実際のところ、日本ではどうなの?

福祉大国と言われる北欧と比べて、どうなの?

こうした素朴な疑問が私にもありました。

障害者施設、と一口に言っても、色んな種類の施設が存在します。

その中でも私が注目したのは、精神障害者施設でした。それまで私が精神障害者施設に対して抱いていたステレオタイプのイメージとしては、暗くて、鍵がかけられていて、人目のつかない場所に建設されている、といったマイナスのイメージでした。

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障害者基本法改正に対する現場の反応

まず、現場の声を率直に聞きたいと思い、実際に障害者施設に対してアンケートを実施しました。

その内容とは、ちょうどその当時クローズアップされていた、障害者基本法の改正に対して、現場のスタッフたちはどのように感じているのかどうか、というものでした。

私は大学生の立場から、働いたことも、見たこともない施設にアンケートを依頼した訳です。もちろん、どんな回答がくるか見当もつきませんでした。法律を改正するということは、良い方向に変化するものだと思い込んでいたのも確かです。

ほとんどが否定的な意見だった

しかし、彼らのアンケート結果を回収した時、目に入ってきたのは、大半が法改正に対してマイナスな期待しかしていない、ということでした。

なぜなら、政府は法改正することで利用者たちの利用の実費負担を求めることを想定していたのです。それにより、現場スタッフたちは、障害者たちの受け皿が無くなることを危惧していました。そして、実際に働いている人たちにしか見えない、障害者たちの抱えるQOLの本質、というものも、アンケート結果から見えてきました。

私が当初イメージしていた、閉鎖的で暗い空間の精神障害者施設というのは、少なからず該当していました。

彼らが生きる施設の空間には制限が為されており、地域生活に参加すること、つまり復帰していくことは難しい、という現実があったのです。

そこで私は、他の国、とりわけ、福祉国家といわれている、福祉の先進国、北欧と比較することにしました。

北欧から入ってきた「ノーマライゼーション」の理念

その当時、「ノーマライゼーション」という長い横文字だけは福祉の現場で少しずつ聞かれるようになっていました。

これは、北欧から入ってきた理念で、障害がある人もない人も関係なく、普通の暮らしが出来るようにすることを意味しています。しかし、実際の日本の福祉現場では、たとえその理念の言葉が行き交うことはあっても、それを実践し、変化させていく、ということは非常にハードルの高いものでした。

北欧での精神障害施設はどうだったかというと、既に地域の中のグループホームへ移行されている段階でした。日本の現状と比較すると、雲泥の差がありました。

私はそれを知った時に、ある意味でとてもショックを覚えた記憶があります。国は違えど、同じ人間が同じ障害を抱えた時にケアを受ける違いが、ここまで浮彫になるのだ、ということが突き付けられた感じでした。

障害を受容する北欧の姿勢

北欧では、障害を受容していく、という姿勢があり、そしてそれを地域で共有し、支えていく、というスタンスが浸透していました。精神障害者に対する理解が啓発されているからこそ、安心して障害者たちも、地域の中で暮らすことが出来ていたのでした。

地域の中のグループホームという位置づけは、精神障害者たちに、普通の人たちと変わらない、人間としての平等な権利を与えることが出来ていました。自然の中で過ごし、外の空気を吸い、鍵のかけられていない自由な空間で自由なことが出来る、というごく当たり前の権利です。

日本がノーマライゼーションに近づくには

日本には元々、違うものを排除する、逸脱を許さない、という根底的な風土があることを否定できません。よって、いつのまにか、障害=逸脱、という構図が出来上がり、その延長で排除された精神障害者たちは、遠い山奥の閉鎖的な施設に閉じ込められるしかありませんでした。

その一方で、障害者たちの「脱施設」ということを目指して、意外にも多くの人たちが、動き出そうとしている現状があることも分かりました。

法改正が為されることにより、日本人たちの福祉体制に対する考察と、改革を求めるアクションが同時進行していたのです。

結論を言えば、未だに日本は北欧と比較すると、人間の根本的な権利やQOLに配慮した福祉理念の欠如を抱えています。北欧の福祉体制と同じ土俵に立つことは難しい現状であることも分かりました。

ただ、日本だけの現状を維持するだけのやり方では、何も変わらないのです。他国に目を向け、そこから私達に欠如している姿勢や方針は何なのかに気づき、人間の本質から見直していく地道な作業こそが、真のノーマライゼーションに近づくことが出来る鍵であることが分かりました。

障害者授産施設で実際に働いて知ったこと

私は大学卒業後、実際に障害者授産施設で働く機会を得ました。

その際に、自分で考察していた現場がまさにあることを経験したのです。スタッフ1人あたり、6人の障害者を担当させられ、鍵つきの部屋へ彼らを入れていました。

彼らの年齢は60歳以上であることが多くありましたが、精神年齢は4歳や5歳である為、たばこを吸いたいという欲求があっても、スタッフがライターなどを管理しておく必要がありました。

よって、彼らが喫煙したい時には、彼ら自身がスタッフルームの前で何度も懇願する姿が見られました。

地域へ参加することが出来るのは、たった月に数回、しかもごく限られた、施設からほど近い店へ、短時間のみの買い物です、もちろんスタッフが付き添います。金額管理も彼らには難しいと判断され、スタッフが金銭管理をしていました。

私はそのような現状に触れるたび、彼らのQOLが配慮されているのかどうか、疑問が残りました。