文学部の卒論テーマはウルトラマン!主人公像の変遷を解説

子どもの頃からウルトラマンシリーズが大好きでした。

特に、ウルトラマンに変身する主人公たちはそれぞれ個性的で憧れの存在です。そんな主人公たちも時代によって様々な描かれ方がされています。

それらの描写と当時の社会の様子を照らし合わせることで主人公たちの描かれ方がどう変わってきたのかを追いたくこのテーマを選びました。

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ウルトラマンとウルトラマンセブンの主人公

1966年に放送された最初の「ウルトラマン」では、ウルトラマンと一体化した主人公のハヤタ隊員は、大きな失敗や挫折をしない完璧な人間として描かれていました。

翌年放送の「ウルトラセブン」では、主人公のモロボシ・ダン隊員は宇宙人のウルトラセブンが人間の姿に変身しているという設定でした。そのためダン隊員は宇宙人として、地球人との「立場の狭間で悩む」という描写がありました。

この時期は高度経済成長期で日本人が明るい未来を信じていた時期でした。

そのため作品の中にギスギスとした人間関係はほぼ無く、この二人の主人公は苦難こそあれど最初から「強い人物」として描かれていていました。

帰ってきたウルトラマンで主人公はどう変わった?

数年のブランクを経て1971年に「帰ってきたウルトラマン」が放送されました。

その後4年間に渡って「第二期ウルトラシリーズ」と呼ばれる作品が製作されました。この時期の主人公の特徴として「人間としての未熟さを押し出した」ことが挙げられます。

例として、帰ってきたウルトラマンの主人公「郷秀樹(ごうひでき)」は任務でミスを犯したり、怪獣と戦う同僚との間で軋轢を生んだりするなど精神的未熟さとそこから成長していく過程が強調されていました。

そうした主人公の未熟と成長は、この時期の作品で程度の差はあれど共通して描かれ続けました。

こうした主人公像の変化の背景には、公害問題などで少しずつ社会が描いていた「明るい未来」に陰りが見えてきたことがあります。

陰りを見せる世相の中だからこそ、子ども達が自分の力で人生を切り開けるようウルトラマンの主人公には「困難と戦い成長していく」要素が加えられました。これは、今日の作品にまで受け継がれる要素になりました。

その後シリーズは再び休眠期に入り、短期の復活はあったものの平成まで長い間国内でテレビシリーズが作られない時期が続きました。

平成ウルトラ三部作の主人公像に求められたもの

そうした中で1996年、久しぶりの国内新作として「ウルトラマンティガ」が製作されました。

アイドルグループV6の長野博氏を主演にむかえ大変な話題となりました。ティガを含め三作品が連続して製作され「平成ウルトラ三部作」と呼ばれています。

この時期の主人公像は基本的に第二期で描かれた成長する若者をベースにして、これまでの作品以上に「ウルトラマンの力の使い方に悩む」ことに重点が置かれました。

時代は昭和から平成に移り、子どもの頃にウルトラマンを見て育った人間が製作者としてウルトラマンを作るようになっていました。彼らは時代の空気を反映して主人公像を作りました。

当時はパソコン環境や携帯電話が普及し始めた時代です。また、映画の中だけだと思われていた大災害や凶悪な犯罪が現実で起き始めていた時代でもありました。

生活環境が劇的に変わっている中、これまで以上に「個人としての在り方とそれに伴う責任」がフィクションの世界でも重視され始めていました。

これまでのように「使命」を受け入れるだけでなく、その使命の在り方そのものに悩み苦しみ、道を切り開いていく主人公像にシフトしていったのです。

また、それは作品の中で常に「ウルトラマンとは何か」を問いかける作風となり大人から子供まで幅広い支持を受けることになりました。

その後もシリーズは休眠と復活を繰り返しながら子どもたちに夢を与え続けています。キャラクターは人間ですのでその成長は無限です。これからも変化する時代の中でその時々の世相を取り入れながら、道を切り開いていく主人公が現れ続けるでしょう。

令和以降のウルトラシリーズへの期待

教授から指摘を受けたのは、海外のヒーローと比較をしたらもっと内容に厚みが出るということでした。

日本の特撮ヒーロー物と海外のヒーロー作品は互いに影響を与え合う関係であり、確かにそうした面から考えたらもっと面白いものになったと思います。

この論文を書いてからさらに月日が流れました。今では平成の作品を見て育った世代が製作現場に入るようになり、平成でできなかったことを模索しながら作品作りが行われています。

平成初期はインターネットが登場しましたが、それも発展を続けていき今ではSNSなど新しいサービスが次々生まれています。

令和を迎えた現在、SNSを利用した悲しい事件や問題なども絶え間なく起きています。そうした問題の全てをウルトラシリーズに入れ込むことは不可能かもしれませんが、閉鎖的な空気を打ち破る強さを主人公たちに見せてもらいたいと考えています。

(文・侑芽(ゆうが))