バランスト・スコアカード(BSC)でプロセスを評価するとは?

バランスト・スコアカード(以下BSC)によって、もっと社会や環境の改善に取り組む企業が増えると思いました。

BSCは元々アメリカの研究者によって1992年に提唱された経営システムです。当時のアメリカは経済的な利益を過度に追い求めてしまうがために様々な不正が発生していました。

また製品やサービスの競争力も他国の追随を許してしまう状況にありました。そこで、もっと多面的に経営を見直し、イノベーションを生み出すシステムとして提唱されたのがBSCです。卒論の執筆時には日本もアメリカの経営を盛んに取り入れていた時期でしたので、同じ轍を踏まないようにするにはと考えたときにこのテーマを選びました。

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バランスト・スコアカード(BSC)とは

まずはBSCの基本構造について説明するところから始めました。

一般的には企業の評価の指標として売上や利益だけを利用すると思うのですが、BSCの特徴はそれを他の面にも広げたところにあります。

つまり、今までの利益などは「財務の視点」とし、その他に「顧客の視点」「内部ビジネスプロセスの視点」「学習と成長の視点」という新しい視点を加え、それぞれの視点で「顧客満足度」や「製造の効率性」「従業員の業務理解度」のようなお金ではない非財務的な指標を設定することで経営の結果だけでなく、プロセスを管理しようとしたところに大きな特徴があります。

また、それぞれが因果関係でつながっており、たとえば従業員が自分の業務について研修などを通して深く理解したり、新たな設備を導入すると製造の効率が上がります。

製造の効率が上がって製品の値段を下げられるようになると、顧客満足度につながります。満足してくれる客が増えることで売上も上がり利益も上がります。このようなプロセスの見える化をすることで、経営の見直しもできるようになりより効果性の高い経営ができるようになります。

BSCを使ってプロセスを評価するとは?

これがどのように社会や環境の役に立つかということですが、BSCの因果関係の視点から考えると見えてきます。

最終的な経済的利益につなげるためには、自社の製品やサービスに対する客の理解を得られなければなりません。客の消費行動は時代とともに変わります。大量生産大量消費の時代に比べて、今はモノ余りの時代ともいわれるぐらい基本的なものは皆もっていますから、現代では環境にやさしいものであるとか、フェアトレード商品といった社会的に正しいと感じられるものを求めて消費行動をする人が増えています。

そうした消費の移り変わりを理解せずに経済的利益を追い求めてもうまくいきません。それはビジネスプロセス、つまり製品の製造工程でも同じことが言えます。

製造のプロセスで、たとえば工場から出る汚染物質が自然環境に悪影響を与えていたら、環境問題を生み出す企業として社会からは認めてもらえません。ですから内部プロセスの視点では環境汚染の度合いに関する指標、その目標値として0%を設定するなどして、なるべくクリーンな製造を目指すようになります。

そのためにはクリーンな製造や環境に対する知識が必要になりますから、これは学習と成長の視点で指標を設定します。このように経営のプロセスを可視化し、そこで目標を設定することはそこで働く人の行動を変えます。これが,卒論で最も面白かった部分でもあります。

組織の行動をより良い方向に向かわせるには?

たとえば学校に通う子どもは成績表によって評価されます。英語や数学などの各教科ごとに1~5という形で成績を付けられれば、まじめな子は必死に勉強して5を狙うでしょう。

それが今後の人生に役立つことがあると思っているからです。企業もそれと同じです。株主という評価者がいる場合は基本的な関心は「いくら儲けたか?」にありますから、経営者は評価されようと必死に経済的利益を求めます。

結果的に粉飾決算などマイナスの行動を引き起こす結果にもなりえますし、そこに社会や環境の視点は入ってきません。一方でBSCを使ってプロセスも評価するようになればどうでしょうか。そして社会・環境に関する成果を株主をはじめ社会全体が求めるようになったらどうでしょうか。

現在はそういった方向に株主、企業、消費者が向かっています。評価する項目によって人の行動が変わり、その広がりとともに社会全体が変わっていくことがわかりました。そのきっかけの1つになりえるのがBSCという経営システムです。

以上ご紹介した通り、BSCを使うことにより経営の結果だけを評価するのではなくプロセスも評価することによって、経済的利益に加えて社会・環境に関する「利益」も追求できるようになります。各視点で適切な指標を設定することによって、組織の行動をより良い方向に向かわせることができるのです。

卒論を執筆して良かったこと

卒論を提出した後に指導して頂いた先生から「時代とともに学生の考えることも変わり、だんだんと社会が豊かになっていっているのを実感する」という言葉を頂き、とても嬉しかったのを覚えています。

もちろん良いことばかりでない世の中ではありますが、大変な卒論執筆を終えて、少しずつでもやっていけばきちんと終わること、そしてそれは社会も同じなのではないかと思い、その考えが今でも自分を元気づけてくれることがあります。

(文・のぶ)