罪が軽くなる中止犯「自己の意思により犯罪を中止した」の判断基準は?

大学院1年目で、何が犯罪で、どのような要件が必要かについて一通り学習したので、次は、どのようにしたら罪が軽くなるのかを考えることにしました。

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罪が軽くなる中止犯とは

未遂犯のうち、「自己の意思により犯罪を中止した」場合を中止犯といいます。

中止犯は刑が必要的に減免されます。これに対して、通常の未遂犯は、任意的に減免されるだけです。このように、中止犯は取り扱いが異なります。

中止犯のことを中止未遂ともいいます。中止未遂と未遂は、一方が成立すれば片方が成立しないという関係で、どちらかの成立要件を満たせばよいので、一般的には、中止未遂の成立要件を検討することになっています。

中止犯とフランクの公式

中止犯は任意に、つまり「自己の意思により」犯罪を中止することが必要です。

では、どのような場合に「自己の意思により」と判断されるのかという疑問が生じます。

この判断に関して、「たとえ成し遂げようと欲しても成し遂げることができない」のを未遂犯、「たとえ成し遂げようとしても、成し遂げることを欲しない」場合が中止犯であるとする「フランクの公式」というものがあります。

中止犯の判断はこのフランクの公式によるべきであることを示すのが研究の目的でした。

政策説と法律説

中止犯は、なぜ刑が減免されるのかをまず明らかにする必要があります。これが法的性格の問題です。

学説には、「後戻りのための黄金の橋」という言葉で代表される政策説と犯罪論の中で説明しようとする法律説があります。

このうち、政策説は、中止犯の刑の減免根拠を十分に説明はできてはいないものの、中止犯が何らかの政策的な規定であることとする点で妥当です。

一方、法律説にある違法減少説、責任減少説、違法責任減少説は、犯罪の実行行為後の事情である中止行為を違法性及び責任の判断の対象にする点で妥当でるとは言い難いです。

そこで、中止犯は、未遂犯の成立によって危険にさらされた具体的な法的に保護された利益を救助するために、既遂の具体的危険の消滅を推奨すべく定められた純然たる政策的なものであるとする意識的危険消滅説が妥当であるとの結論に至りました。

任意性の要件に関する諸学説

どの範囲までが「自己の意思により犯罪を中止した」といえるのか、つまり任意性の要件を巡っては、限定主観説、主観説、客観説、折衷説、不合理決断説があります。

まず限定主観説は、何らかの意味での規範的感情の表れとしての意思、すなわち、悔悟、憐み、不安、恐怖、広義における自己の行為の価値否定的な意思に基づく場合のみを任意の中止とする。

この説は、行為者の主観を問題にする点においては正当であると思われます。しかし、条文上、ここまで厳格な要件を要求しているわけではありませんから、刑法における犯罪の消極的な要件としての解釈には疑問があるといえます。

客観説は、未遂犯に至る関係が、経験上、犯罪の既遂となることに、通常、妨害を与えることができる性質のものかどうかにより区別すべきだとします。この説は、中止の動機となった事情が、一般の経験上、強制的影響を与えたかどうかを「自己の意思により」の判断基準としているようですが、主観的な要件の判断に一般人を基準とするところで、方法論的に妥当ではないと思われます。

折衷説も、同じく客観説に対する批判が妥当します。

不合理決断説は、犯罪実行時の目的合理的に行動する人間の冷静な理性を基礎として、不合理に判断して、犯罪の実行を中止したときは、自己の意思により中止したものであるとします。

しかし、理性的人間が全て同一の動機を有するものと仮定したうえで、行為者が行為を中止するだろうかと予測することが実際に可能かどうかは不明です。この見解によれば、「犯罪の遂行につき冷徹で理性的な犯罪者」というモデルを採用するのですが、なぜ、このようなモデルを採用しなければならないのかよく分かりません。

そこで、主観説です。中止犯の法的性格を意識的な危険消滅に求める立場からは、任意性がないのは結果発生の危険が存在しない場合、すなわち犯罪の遂行が主観的に不可能な場合です。

これは、「フランクの公式」の「成し遂げようと欲しても成し遂げることができない」場合に相当します。したがって、主観説が妥当で、この立場よれば、任意性の判断にあたっては、行為者の主観において任意性が否定されるのは、中止行為を強制された場合か中止せざるを得ない場合に限定されることになります。

私見としては、中止犯の成立範囲を広げて、法益(法律によって守られる利益)を保護すべきであるし、また中止犯という規定が存在することをもっと周知すべきであると思います。

さて、私の論文では、共犯と中止犯、予備犯と中止犯については検討することができませんでした。不能犯(代表的な例として、丑の刻参り)についても検討することができませんでした。これが、今後の課題として残りました。しかし、この研究の結果が認められて、大学院博士後期課程への入学が認められました。