弥生時代の稲作に用いた木製品には、どのような樹種が使われていたか

弥生時代の木製品研究の大半がその用途に絞られているため、卒業論文では別の視点でどうなるかをまとめようと思いました。

私は木製品ごとの樹種に着目し、当時の人々がそれぞれの道具に合った樹種を選択していたか、地域によって特色があったかを調べました。

遺跡の周辺の環境と、木製品の樹種を照らし合わせた研究は少なく、こちらも気になったので要素として加えました。

研究を通じて、木材の利用をはじめ自然と共存して循環型の社会を作り上げていた日本人が、プラスチックといった自然に還元できないものを生みだし、大量消費型の社会に変化したことへの問題提起をしたいと考えました。

最終的にそこまで問題を繋げることはできませんでしたが、人が便利さを得た代わりに失うものがある、ということを再度考える機会となりました。

稲作にかかわりの深い農耕具の樹種に注目

この論文は4章構成で、「弥生時代中期の木製品と周辺環境」をテーマに扱っています。

弥生時代というとあまりぱっとしたイメージがわかない、という人が多いと思います。そもそも小中高の歴史の授業で弥生時代が紹介されていても、大陸から農業が伝来し、稲作が始まった、定住生活がより定着し始めた、というあたりでしょうか。

今回取り扱った木製品の多くは、その稲作にかかわりの深い農耕具が大多数を占めています。

材料は周辺から調達していたと考えられるためその製作にあたり、人がどのような樹種を選択してきたのかをまとめ、考察しました。

今回取り扱った木製品ですが、細かく上げると定義に説明がいる部分があるので、「農耕具や建築材、人間によって加工された跡が見られる製品」という、人の手が加えられたものというところがポイントとなります。

ちなみに農耕具に関して言いますと、つい数十年前まで使われていた民具と形が似ているものが多いため、用途に関しての研究が多いのはその関連だと思われます。

周辺環境の調査方法

次に周辺環境ですが、これは木製品とは逆に木の根や「人間によって加工された跡のない」自然木や途中に含まれる花粉を分析して当時の環境を再現しようとするものです。

こちらに関しては専門的な分析ですので、発掘調査報告書に載せられた結果をもとにしています。ただ問題なのが、花粉の試料が少ないことや、花粉の飛散範囲がどれほど広いのかも考慮しなければならないので、必ずしも先行研究を鵜呑みにすることはできません。そのため今後の分析の精度が上がることを期待しています。

取り上げる遺跡の選定方法

さて、次に取り上げた遺跡ですが今回は4遺跡、神奈川、千葉、群馬、長野から1つずつ遺跡を取り上げました。

まず木製品は日本で残る例はとても限られます。というのも日本の土壌は木を分解しやすく、泥などで真空状態に密閉されなければほとんど残りません。

そしてこの泥がある場所というのは、旧河道といった水が豊富にあった農耕が行われていた可能性が高い場所です。そのため鍬といった農耕具が大半を占めていました。

そこから発見された木製品を樹種ごとに分類し、周辺環境の分析と照らし合わせた結果から、一部の製品に樹種の選択をしていた可能性が高いことが考えられる、という結論を得ました。

鋤鍬、容器に使われる樹種の傾向は?

考察も含め2つ例を挙げようと思います。

1つ目は強度のあるコナラ属アカガシ亜属という樹種は、鋤鍬や石斧などに多く見られるため、一定の耐久が必要なものに使用していたことが考えられました。

これは他の遺跡で周辺環境の分析では検出数の少ないカシ類が、鋤鍬に多く使われていた遺跡もあることから、強度のある木という条件があると推測されます。

2つ目は容器に一定数、ケヤキを使用していることが分かりました。現在でもケヤキはお椀などとして加工されているため、古くから身近な存在であったようです。

今回のまとめた結果、傾向を見て取ることはできましたが、これはあくまで木製品が多く発見されたわずか4遺跡しか取り扱っていません。

また発掘調査報告書内では、発掘期間が迫っていることで不明な樹種が多々あるほか、当時の試料のラベルが油性ペンや鉛筆で書かれていたために現在読み取ることが出来ないものが多かった、といった趣旨の記述がありました。

そのため報告書に掲載できなかった木製品が多数ある他、発見された資料が膨大でその整理がされていないという遺跡にも遭遇しました。今後こういった研究をされる方に困難が立ちはだかると想定されますが、それでもある一定の傾向は読み取れるため、当時の生活を復元する手段の1つになるかもしれません。

卒業論文をまとめてみて気づいたこと

当初の構成では8遺跡ほどを取り扱おうと考えていましたが、実際に資料をあたってみると必要な情報が掲載されていないことや、想定よりも木製品の出土例が少ないことがあり、比較する遺跡を探すことが難航しました。

また具体的な数字を扱う場合には、図表もつくることも構成段階で入れておいた方が良かったなと思いました。私は表のみしか考えておらず、12月になって大変な目にあいました。図があるだけ格段に説得力が変わりますので、作成することをおすすめします。